まだ制服を着る前、好意を寄せてくれる男の子の情熱が嫌だった記憶がある。
何となくぼんやりと、私が片想いしていた子もそういう感じを私に抱いていたのだろうな。
と世界の色が少しだけ白っぽくなるような気持ちだけが残っている。
若干、白昼夢に似ているようなそれは、恋というものに酔ってはしゃぐほど気持ちがしっかり存在していなくて、バレンタインデーのチョコ売り場でチョコレートを買いはするけど、結局誰にあげたいのか、店を出て、外を歩きながら考えると、あげる人は、どこの誰でもないし、好きだと想っていたはずの子のことを考えても、心は少しも動かなかった。
きっと好きな人がいないことが寂しくて、好きな人を作っていたのだろうし、たぶんそのことが後ろめたいから、誰あてでもないチョコレートを買ったことを、いつまでも覚えているのだろう。
その子のことは、ハンカチを無くしてしまった程度にすぐ忘れてしまった。
大人になり、ある時、友達の子が、これから仲良くなって半月後には付き合い始めて、大体1年後に今日のことを想い出として話すだろうことが、わかりきってる時に、「誰でもいいの」と、ふと言った。
大人になり、ある時、友達の子が、これから仲良くなって半月後には付き合い始めて、大体1年後に今日のことを想い出として話すだろうことが、わかりきってる時に、「誰でもいいの」と、ふと言った。
ものすごく晴れていた日で、なのに空は真っ白だった記憶がある。
ああ、わかるよ。と思い、私は黙って並んで歩いて、頃合いに別の話を始めた。
誰とでもセックスをするの、という告白では全く無い、いまは恋愛をしてもいいし、しなくてもいいんだけど、いないといけないみたいだし、向こうは押してくるし、だったらそれでもいいかな、という気持ちと、少しの強がりが混ざっていたひと言を、寂しく思われると書いた私が少しだけ困る。
また、そういう気持ちで恋愛を始めるなんて、と、失礼だから相手に断るべき、という憐れみを持たれても馬鹿馬鹿しい。
正しく出会い、正しく精査し、正しく気持ちを持って、正しくお付き合いを始める人はさておき、恋愛期にはそんな季節や鈍い毎日があるし、そういう始まりもある。
その後、本気になって、始まりの醒めた気持ちを無理矢理、良いものに変換しても、別にズルくもなんともない。
ウインドウに並ぶチョコレートは宝石のように見え続けるが、箱から出して少しがっかりすることなんて日常茶飯事だ。
食べてみて、なんでこれにしたんだろうと悲しくなることも、14日当日が煩わしいのも、ドライヤーで髪を乾かしながら疲れてしまい、断りの電話を入れたらダメだろうか、と思ってしまったことをうまく忘れて、楽しみに過ごす、そんなのも込みで全部が恋愛だ。
私達も、きっと彼らも、そういう日々の中にいて、憂鬱を紛らわすために、恋愛に入ってみる時もたまにはある。
次に買う恋愛入りのチョコレートは、取り立ててどうということはない見慣れた甘さだという現実に、まるで初めて触れるフリが、より上手にできる成分であることを、黙って願っている。
次に買う恋愛入りのチョコレートは、取り立ててどうということはない見慣れた甘さだという現実に、まるで初めて触れるフリが、より上手にできる成分であることを、黙って願っている。
そんな罪の味がすることも、とてもよくわかっていて、テーブル越しにリボンをほどく指先をぼんやりと眺めていた。
-----
いろいろと混ぜ込んだメッセージ。
-----
お礼のつもりです。
かばってくださり、また怒ってくださり、ありがとうございました。
驚きました。この世界は驚きにみちていますね。
また美しいやりようも、とても勉強になりました。
まだ、全然、触れられていません。
お仕事のジャマにならないように、という気持ちです。
不義理がお恥ずかしいですが、なにぶんこういうことはわからないことが多く、余計なことをして何か悪い影響やご迷惑がと思う気持ちから、ひとつ選びました。
ありがとうございました。
暮らしはストレスがほとんど無く、だいぶこういう方向で言葉が出るようになりました。
なにがなんだかわかりませんが(笑)、もう泣いていません。
ひっそりとお墓参りに行ってきます。
池波正太郎の好物だったという食事をしてきます。
どうかお体を大切に、
穏やかな日常の中で幸せであられますように。
さらなるご活躍をお祈り申し上げております。
私は大丈夫です。
エナメルより
-----