日曜日なので、穏やかな内容を書いています。
古いビルがとても好きです。
好きなのは、ただ単に古いビルでして、東京の低いビル群みたいなのです。
西洋建築や和洋折衷の明治期頃のビルのようなものも好きですが、断トツに好きなのは、昭和50年頃既に古かったビル達です。
年代を調べた訳ではないので、まあそのくらいです。
そういったビルをリノベーションして、ずっと暮らそうという流れが古くからあります。
体感では、90年代頃から気がついて2000年代頃下火になり、昨今では、やってはいるけれどそんなに積極的ではないよ、という感じです。
部屋の近くにあるビルはその数少ない成功例で、瞬く間にデザイン事務所のような、それと美容関係(私の住む街はどうしてこんなに美容室が多いんでしょう。多くの人達は月に1回しか行っていないのに。)、レストランらしきものが入ってしまい、ああいう所を綺麗に直して、あの風合いと景色をそのままに落ち着いた上品な雰囲気の中で、インフラは普通の生活をしたいな。という人達が、いつも前を通りかかっては見上げたり写真を撮ったり、ジロジロ配電盤を見ては、建物から誰か出てくると突然歩き出したりしています。
全員、映画でいうと「濱マイク」のような部屋で、ミッドセンチュリーでもいいし植物が多い明るい部屋で、アイアンと木の家具なんか置いてアナログレコードをかけたりしつつも、家電は最新のものを静かに使って暮らしたいわけです。
なのにどうしてかリノベーションには、世の中が消極的なんです。
そして新しいビルは本当に素敵なんだけど、どいつもこいつも全部同じ感じのビルで非常に家賃が高いんです。
実際に不景気かどうかは、さておき。
多くの若者や青年や青年期が終わった40代半ばからの人は、全員そういう部屋に住みたいんです。
ノスタルジックなどではなく、きっと想像上のどこかのアジア地域の綺麗な古いビル群に、毎年五月頃にブーゲンビレアが花を咲かせ、街路樹があり、街灯がきちんと明るい通りの一角に部屋を構え、備え付けの小さな鉄製の柵にブリキの植木鉢を置き、ささやかな草花を植え、リネンでもコットンでもいいからさっぱりとしたカーテンを選び、窓は出来れば手前に引くタイプの木製のアレが付いていて欲しいんです。
80年代頃から2025年の現在まで、多くの単身者や2人暮らしの、身軽なライフスタイルの人達はそこに住みたいんです。
でもなぜか日本中の小さな古いビルは、いつまで経ってもアルミサッシで木製のシェードも付いていないし、注文しようもんなら、だったらもう少し上のレベルの部屋を借ります。という値段なんです。
どうしていつまで経っても、セリアやAmazonにある真鍮のドアノブに電子ロック1つ組み合わせて販売できないんでしょうか。
なぜ壁を這う蔦には、本当はムカデなんか発生しないし、出そうだなという地域であっても、根元に市販されていて人体に悪影響など無い忌避剤を使わないんでしょうか。
どうして日本の建築に関わる人達は、アルミサッシを背負って生まれてきたかのように、アルミサッシばかりを使うんでしょうか?
なぜそんなに天井が高いことばかりに目が行くんでしょうか?
アイランドキッチン(独立した四角いスペース)に手前に曲がっている使いにくさ倍増の蛇口を付け、何が何でも食洗機を置けない広さしかないキッチンを備え付け 、いつまで経っても戸建て住宅のオーブンレンジは、腰より低い位置に備え付けじゃあ無いんでしょうか?
どうしてそんなに魚焼きグリルじゃないといけないんでしょうか?
ドアだって手前に開くタイプの、細い隙間がたくさんある木製にすれば良いのに、頑強に横にスライドする引き戸にこだわり続け、手前に開く木製ドアの中に、もう一つ頑丈な金属製の目が細かい網戸を付ければ、別にそんなに虫は入って来ないんだし、古いビルのゴキブリ対策はブラックキャップをガンガン置いておけば全て解決済みなのに、どうしていつまで経っても公団式住宅の劣化コピーみたいな部屋ばかり用意して、1人か2人で住む人達が多い地域に、3LDKの部屋が最低条件なんでしょうね。
そして古いビルをリノベーションしたら、即いかにもこういう所で働いていそうな、カジュアルだけで全身トータル30万円の服を着た、とてもお金持ちの人達がわざわざそこで仕事をして、結局、若い人はあまり好きじゃ無いみたい、というデータしか出せないんでしょうか?
そういう人達が高めの賃料を払ってダッシュで借りるんだから、需要はとても高いし、町内の一区画全体がそんな洒落たリノベーションビルエリアだったら、そこはもう街1番の素敵なビルヂング住宅地になり、通りを挟んで小さなワインとスイーツのお店や、洋書や海外の雑誌の翻訳版がさりげなく並んでいるマガジンスタンドとコーヒーショップが、自動的に出来るんですが。
古く、西洋建築が美しかった高校や大学の校舎は、何が何でも近代建築にしてしまい、木造でそのまま造り直しますからって言いながら、必ず建築士が「何かを絶対変えないといけないインフルエンザ」に感染し、元の図面を、図書館からデータベースからアーカイブスから探し出し、ただ単にそのまま作り替えながら内部のインフラのみ最新設備を入れ込めばいいのに、いきなり素材から変えてしまい、田舎の郊外にうっかり建ってしまったメルヘンチックな亜流の建物になってしまうんでしょうね。
私は陰謀論というものを欠片も信じておりませんが。
ここまで何十という年数を経ても尚、アルミサッシに執拗にこだわり、手前開きのアイアンレリーフのドア1つ、アイアンワークの窓1つ、真鍮のノブ1つ標準仕様にしない所をみると、
「古くて雰囲気があって、雨の日には滲んだ窓枠越しに外を眺め、一杯のコーヒーを飲み、好きな洋書や小説でも読もうかな? 」
という何十万人という人々の嗜好を、安く常識の範囲内の家賃で叶えると、そこの会社員さんの戸建てハウスでは、必ず土器を使って生活しなければならない呪いにかかるようになっているんでしょうか?
不思議ですね。
それでは、アジア地域のミックスカルチャーの果てに出来た、美しく古い建築をグーグル検索したりしながら、素敵な日曜日をお過ごし下さい。
20250330 17:02 文章を直しました。
20250331 02:07 誤字を直しました。