休刊 キム・ソクジン



休刊 キム・ソクジン 
あと2ヶ月ですね。
ARMYさん達も待ち遠しくされていると思います。
アルバコエルレアオクラータは花が終わりました。
無事のお戻りを待っています:)

2024/04/06

桜の木の上には

 

ソメイヨシノ


蛇足ですが。
 
ちょっとだけ昔、私には、心の底でなんだかわからない慕い方をしている人がいました。
いま思うと、あまりにありきたりで申し訳ないんですが、
その人は、兄のような人でした。
 
10年前の言い訳というような苦笑をされるかもしれませんが、確かに、その人は私にとって兄のような人だったんです。
 
でも例によって私はおくびにも出さず、現実で決して近づくことなく、ただ色々ある重い現実の中で、勝手にそう慕い続けていました。
 
もし、という言葉がありますが。
もし、もっと近づいていたら。
もし、もっとくだらない会話を延々と続けていたら。
そう思われるかもしれませんが、
現実はそうではありませんでした。
 
近づこうと思えばいくらでも、どんな方法でもありましたし、わからないことはなかったんですが。
なんだか知らないけれど、億光年の距離を保って、なんだかずっとある見方をすれば、やはりその人は私を兄のように叱ってくださり、苛つき、がっかりされていたように思います。
 
やがてもっと時間が過ぎ、私はその人の訃報をわざと遅らせて、自分が耐えられる状態になってから、無意識がやっとその報せを偶然のはてに自分に受け渡しました。
 
それでもやはり、いままでにない程、私は悲しみました。
 
数ヶ月間、きっと泣き続けていたんでしょう。
他の大恩ある方の訃報も重なり、私は、もう機能しているのがやっとの状態で、毎晩、毎晩、泣いていました。
 
ああ、泣けるようになったんだ。と感謝しながら、でもとてもとてもその悲しみはいつまでも終わらない、底の無い、失恋したときだってこんなに泣いたことはないほど、涙にくれていました。 

だからきっと私はどこかで、このまま悲しみながら死ぬのかもしれない。と決意したのかもしれません。
意識では、へらへらしながら泣いていましたから、それはなんだかもうよく分からないところで、もういいや、と思っていたのかもしれません。
 
そうしたら、不思議なことが私の部屋で起こり始めました。
不可思議なことが続く中、なんだかわからないながら、私は淡々とその不思議達と対峙し、対話し、醒めた態度で受け流し続けました。
 
やがて、兄のように慕っていた人が、彼岸からなぜか現れ、私に、なんだかもう遠回し極まりない約束をしてくれました。
 
本当のことを書けば、その人と私は色々な話をしました。
話したかったこと、言いたかったこと、そんなくそどうでもいい話をたくさんしました。
でも、途中で、私は、これは私の精神が作り上げた幻影の中にいるのだろう。とうとう私の心は限界を迎えてしまったのだと思っていました。
どうしてこの人が現れ、私にあれこれ、生前と変わらずとりとめのない話をするんだろう? とか考える前に、あっさりと、
「お前はいま死の淵にいる。」
「来んな。来んじゃねーよ!」
と叱って、それから何事も無かったように話し出しました。
 
すごく楽しくって、笑いながら、閉めている窓の外と中で、どうして話が出来るんだろう? と疑問に思いもせずに、一歩踏み出した時、
「行くな!」
とものすごい大きな声が頭の中で響いて、すべてが消えました。
 
でも、その人は、私に約束をしたんです。
それは、私が寿命で死んだとき、約束を果たすから、というものでした。
 
だから、私は幻影の中から戻ったとき、おかしな話ですが、寿命で死ぬのがとても楽しみになりました。
寿命で死に、その約束が果たされるのがとても楽しみになりました。
 
ただ単に、「なにやってんだよ、死ぬんじゃねーよ!」って言えばいいのに、相変わらず、私がどうしても守らねばならないのが何か、よくご存じだな、と苦笑いをしています。
 
奇妙な話ですが、私の身の上に起こった事ですので、私にとってはこれは現実の話というわけです。
 
いい話でしょう?
 
まあ、そういうわけです。
だから、私は、もう食事もちゃんと摂って、ゆっくり眠って、楽しく静かに過ごしています。
どうか、ご心配されませんよう。
 
エナメル