休刊 キム・ソクジン



休刊 キム・ソクジン 
あと2ヶ月ですね。
ARMYさん達も待ち遠しくされていると思います。
アルバコエルレアオクラータは花が終わりました。
無事のお戻りを待っています:)

2023/07/06

Japanese Summer Maniac Pops ー 睡蓮の開く音がする月夜 第3夜 ー ようこそ輝く時間へ / 松任谷由美 (Yumi Matsutoya)

 

Japanese Summer Maniac Pops

ー 睡蓮の開く音がする月夜  3夜 ー

 

ようこそ輝く時間へ / 松任谷由美 (Yumi Matsutoya)

 

 

 

アルバム PEARL PIERCE 収録

 

 

松任谷由美を語るときに、アルバム「パール・ピアス」以前、「パール・ピアス」以降で区分けが行われる。

 

というのを、昔読んだことがあるんですが、例によって、私はこの意見は支持しません(笑)。

 

私の、アルバム「PEARL PIERCE」観ですが。

 

タイトルトラックの「真珠のピアス」の中で歌われている、女性の復讐と”されている”、あまりにも強いイメージが先行して、なんだかアルバム「PEARL PIERCE」の話を探しても、大声で言われてる話は、その復讐の話ばっかりで、

「女って怖い! 」

「それを歌う松任谷由美も怖い! 」

という、

「小学生男子かよ! 」

ということしかなくって、

私はいつも少し不機嫌になって、その情報から離れていました。

(それ以降、「PEARL PIERCE」についての話題は見てないので、あくまでも私がサーチした当時の話です。)

 

音楽をどう聴こうが、それはその人の自由なので、それはそれで、その感想はアリなんですけれど。

 

でも楽曲「真珠のピアス」で歌われてるのは、

「本命でなかった彼女からのちょっとした意地悪」

なので、

 

そのミニマムだけれど、

 

大人の女性が持つ軽い棘や、

スパイスの効いた世界への視線、

大人になってもできないこと、

少し孤独な気持ち、

 

というキーワードで埋め尽くされている、

初夏から真夏を通り過ぎて、

最後は季節があまり明らかにされていないという余韻、

に満ちたアルバムに収録されているタイトルトラックなんだから、

こと大きく「女の復讐」として取り上げるのはどうか、

と私は思います。

 

この話って、怖い怖いって言われていますけれど。

 

本命になれなかった主人公が、別れの挨拶に、ちょっと彩りを加えてみた、どこかソリティア(ひとり遊び)味が強いんです。

 

そして、主人公は、そういうちょっと意地悪な遊びをしながら、

相手の男が、仮にこの意地悪で後で一瞬、ドキッとするような気まずい空気に包まれても、

うまく交わすんだろうし、

本命の彼女もそこを察した上で、

自分を選んだ男と新しい生活に向かうだろうことが、

わかりすぎるほどわかっているので、

結局、ああ、私は、うまくいった2人のエピソードになっちゃったな・・・、

という部分で、傷ついているんですよね。

 

アルバム「PEARL PIERCE」全体に流れているテーマは、「大人になったと思っている、少女性も魔性も、意地悪さも持った、等身大の女性像の、日常風景から始まる物語群」

なので、

受け取り方の個人差のズレがあったとしても、

アルバム全体を流れるテーマ大きく逸脱して、

曲鑑賞するのはどうなんでしょう。

 

まあそれすらも、私個人の鑑賞の範囲なんですが。

 

 

実は、私は初めて松任谷由美を聴いたのが、この「PEARL PIERCE」とその次のアルバムの「REINCARNATION」でした。

 

細かい経緯は忘れてしまいましたが、それまでは松任谷由実は、F Mでエアチェックするに留めていたんですけれど、どうしてもちゃんと聴きたくて、という流れだったはずです。

 

で、なんの予備知識もないまま、手に取ったこの2枚のアルバムの最初に聴いた方が「PEARL PIERCE」で、その第一曲目に収録されているのが「ようこそ輝く時間へ」でした。

 

私が思う、松任谷由美のものすごさって、

 

「誰もが言語化したくてもできなかったことを、洗練された言葉にして、歌詞世界に落とし込む」

 

という才能なので、

(どこかの誰かが、下手の横好きで、同じようなことをずっとやってるけれど、どこにも行けてませんね。ええ、私のことです。どこかに行きたくてやってるわけではありませんが。)、

 

「夜空に浮かんだスタジアム

カプセルに乗ってのぞいたら

歓声が舞い上がる

ああこのまま 時間を忘れて

世界を舞い跳ぶ ビームになりたい」

(「ようこそ輝く時間へ」 松任谷由美 より)

 

を聴いて、当時の私は度肝を抜かれました。

 

いまでもそうなんですが。

私は夏は嫌いだけれど、夏の夕方から夜にかけてはとても好きで、気持ちがどこか高揚して、浮遊感に包まれる季節の肌触りを、この楽曲で松任谷由実は表現しているんですよね。

 

本当に驚きましたし、いま聴き返しても、やはり驚きがあります。

 

そして、前後してしまいましたが、

冒頭の歌詞。

 

「夜風が涼しくなる頃は

哀しい子供に戻るから

連れて行って 遊園地

 

ネオンの星座も色褪せて 

バターの香りが流れ来る

黄昏の遊園地」

(「ようこそ輝く時間へ」 松任谷由美 より)

 

初っ端からこれです。

ものすごいですよね。感性の鋭さが!

 

そして、こういう情景を日本語で歌ったのは、松任谷由実が最初だったのではないかと私は予測しています。

 

そしてそして、

 

「大人になったら宿題は

なくなるものだと思ってた

行かないで 夏休み」

(「ようこそ輝く時間へ」 松任谷由美 より)

 

という、

もう余計なことを私が書く必要のない、

凄まじいまでに鋭く繊細な感性の歌詞で、

この楽曲はできています。

 

ふだん暮らしていて、私は「PEARL PIERCE」を聴くときは聴くし、聴かないときは全く聴きません。

 

ただ、この時期の季節感、照りつける陽射しの強さ、夕立や雲の動き、それらが茜色に染まって夜が始まる、夏の情景が、この楽曲とともに脳に焼きついているので、夏が来ると、どうしても一回は「ようこそ輝く時間へ」が聴きたくなり、その後、結局はアルバム全体を聴いてしまうというのが、私にとっての「PEARL PIERCE」です。

 

多感な時期に、アルバム「PEARL PIERCE」を聴いて、私はこう思いました。

 

「大人になっても、いまの気持ちを持っていていいんだ。」

 

それから随分と時間が経ってしまいましたが、

私は、当時のその気持ちを失うことなく、相変わらずのよくわからない日々を過ごしています。

 

そして、同じ気持ちの人が世界中にたくさんいることを、いまでは知っています。

それは、とても幸せなことなのだ、ということを、わかりすぎるほどわかった上で・・・。

 

 

それではまた、日本時間の明日の夜7時に、お会いしましょう。

 

 

 

タイトル副題 河出文庫 少年アリス 長野まゆみ(Mayumi Nagano) より、冒頭第1節を引用

 

 

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