気がつくと、私の周りから姿を消していたものの中に、バタークリームケーキがあります。
・・・大体なにやってるか、お分かりになったと思いますが(笑)
そういうイベントです。よろしくお付き合いください。
バタークリームケーキに話を戻すと、決して好物だったものではなかったんです。苦手な味で。
理由は、「想像していたケーキの味とは違った」から。
想像の味というものがありますよね。
ここで触れた「あの味」とはちょっと違って、最初に何か食べてその味が記憶にこびりつくのではなく、最初から想像している味。
私の場合、ケーキは「ぐりとぐらのパンケーキ」の味への想像だったんです。
通常の生クリームのケーキからすると、ずいぶんさっぱりした味を想像したものだな、と我ながら思うんですが(笑)。
とにかくケーキといえば、こんな感じだろうな、と、なぜか、「ぐりとぐらのパンケーキ」を読んで思い込んでしまい、初めてケーキを食べた時に、想像とあまりに違う、バタークリームケーキの味に、苦手意識を持ってしまったんですね。
そのあとも、食べてみたいなぁと思う想像の味のケーキは、赤毛のアンで、マリラが作るめくるめくケーキ達だったり、アンが特別な日に作る、赤いゼリーをはさんだスポンジケーキだったりして、こういうのは手作りじゃないと食べられないんだな、とうらめしく思って、指をくわえたままだったんです。
(だから「赤毛のアンのお料理ノート」をずっと持ってるわけですね。)
なので、私の中で、デコレーションケーキってそんなに価値が高くなかったんです。
それが、保存方法が発達して、誰でも、生クリームのケーキが食べられるようになって、何かの記念日とかに食べてみたら、
「こりゃ、すごく美味しいものだな!」←笑
と思って、いまに至ります。
それは「想像の味」を「現実の味が超えた瞬間」でもあったわけです。
同時に、私のバタークリームケーキの味は「記憶の味」となってしまい、そのまま自分でも特に意識することなく、おいしい、おいしい、生クリームのケーキライフが続いていたんです。
それが、今年の1月ごろに、セブンイレブンから、「バタークリームケーキ」という小さなプリン型に入ってるケーキが売り出されたんですね。
それを見かけたときに、「そういえば・・・バタクリームケーキってずっと食べてないな」と思ったんです。
苦手な味だったということは、すっぽり抜け落ちてて、デザートコーナーにあるバタークリームケーキを見ている私には、ノスタルジーだけがわき起こっていたんです。
それで、買って帰って、食べてみた瞬間、まさにバタークリームケーキの味で、よく復元したものだな、と驚くほど、それはバタークリームケーキの味がしたんです。
と同時に、すさまじい勢いで、本当はしてない、「記憶の中の胸焼けの味」がよみがえってきて、
「ああ!そういえば苦手だったー!」
と、バタークリームケーキをひとすくいしたスプーンを持って、固まってしまったことがあります。←失笑
結局、「これは記憶の味で、いまは、口の中に広がってない味だ」とすぐに気がついて、せっせと口に運んでみると、大人になってから食べる、等身大のバタークリームケーキは、こくがあって後味はスッキリしている、おいしいケーキだったんですね。
なので、ああもう、あの記憶の味というのは、私の中に残る錯覚の味だったんだ、と思い当たって、その「胸焼けの味」は、「バター風味のおいしいケーキ」に、無事、上書きされました。
いまはバタークリームケーキも好きです。
ただ、残念なことにセブンイレブンで現在は取り扱いがないので、またどこかで見かけたら、今度は、「あの味」として、バタークリームケーキを食べてみようと思います。
表題曲は松任谷由美で「9月には帰らない」
いま5月ですけど(笑)。
なぜか私の中で、少女期を思いおこすのは、この曲なんですよね。
それで選びました。
タイムリーではなかったんですが、これも記憶にまつわる、
ノスタルジーがなせる錯覚の1つかもしれません。
アルバム「紅雀」に収録されています。
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