以前、私は本当に合わない町に住んでいたことがありました。
それでまあ現実に嫌な目に散々合っていたんです。
はっきり言って、当時の私の部屋の周辺には、私のことが何故だか嫌いな人が多めで、どちらでもないし普通に接しますよ? という人が5人くらいしか居なかったんです。
しかもその人達とも会話したのは1回ずつという、ツイテイナイ時期だったんです。
その頃、後からその町にやって来た女性が、ほったらかしの10メートルくらいの空き地を持つ小さな建物に、ペット専門の雑貨店を開いたんです。
店構えとかが私の好きな雰囲気の雑貨で、私にはペット雑貨は必要なかったけれど、お店の飾りつけもシンプルで洒落てて、私はその前を通るとき、わざとゆっくり歩いてホッとしていました。
そのうちその女性が、昼間にほったらかしの雑草が生えているスペースで、軍手して草むしりを始めたんです。
お店の掃除かな?と思っていたんですが、その女性はただ黙々と日々時間が空いたときに草むしりをしていました。
1人でやっているから、ちょっとずつしか進まないんですけれど、とにかく草むしりを淡々と進めていました。
そのうち、その草が全部抜かれて、白い土の部分だけになった後、DIYでよく使われてる、ラティスと呼ばれる木の塀を周囲に立てて、お洒落白い色に塗ったんです。
???と思いながら、毎日前を通っていると、そのうち、そのペット専門の雑貨店は、ドッグランとしてそこをお客さんに提供したんです。
ドッグランを作られていたんです。
そういう所で、なんだかそういう場所でしたから、多分、何らかはあったと思うんですが、その人はただ淡々と、1人でドッグランを作っちゃったんです。
私は、とにかく手を動かしていれば、作りたいものは、そのうち完成するんだな。
というのをあらためて確認したんですよね。
お金を貯めてその町を離れ、すごく時間が経っていく中、私は時々、その女性がしゃがんで黙々と手を動かしている姿を思い出します。
きっと気持ちが落ち着くからなんでしょうね。
黙々と手を動かしていれば、そのうち完成する。
黙っていていいんです。
何やってるんですか? とか、そんなことしても、とか、いいですよね? それで一体何を? とか、しつこくされても、適当に生返事して、淡々とまた手を動かす時間に戻ればいいだけ、なんですよね。
気持ちが鎮まる光景として、彼女の姿は私の中に残っています。
みなさんは、気持ちが鎮まる音楽はなんですか?
私はアリアナ・グランデの7 ringsという曲です。
これはティファニーにアリアナが買い物に行ったときに、ソファに通されてシャンパンを飲んでいる時に、飲み過ぎちゃって酔っ払ってしまい、1個しかいらなかった指輪を間違えて7個買っちゃったんです。
ティファニーは老舗ですから、そんな詐欺な気持ちを出しませんので、アリアナが酔って注文して、ああ間違えているんだな、と思っても、その場で7個の指輪を渡して、後で返品を受けるつもりで、アリアナの気持ちをくじかないようにしたんですよね。
これは高級有名店の話で、私達が普段行くお店では現実にありません。
結局、アリアナは余っちゃった6個の指輪を、自分の仲間にあげたそうです。
これにはもう一つ素敵な話があって、いつもアリアナにいい仕事をしてくれる、スタイリストさんが居たんですって。
その彼女に、新たに同じ指輪の7個目を1つ買ってきて、贈ったんだそうです。
彼女はとても感激したんだろうな、と思います。
あなたも仲間よ、と言うほどの仕事をし続けた彼女への気持ちとしては、最上級だと思います。
歌詞の内容は、私の解釈ですが、消費や欲望、そしてお金の感覚を持つ、お金が自由になるとある若い女性のことを歌っています。
所々、当時のアリアナの様子が顔を出していますが、歌詞全体を見ると、ああ、あのゴージャスな暮らしをしている人達は、こういう気持ちなのかもね。
という好きな歌です。
私はこの曲を聴くと、気持ちが鎮まります。
淡々と手を動かそうと思うんです。
それはジュディ・ガーランドがミュージカル映画で「マイ・フェイバリット・シングス」という歌を披露した時、私も自分のお気に入りをここにはめ込んで歌いたいな。
そうしたら、私の大切なものにもっと私の気持ちが込められるのに。
気持ちが沈んだ時、この自分だけの替え歌を口ずさめば、気持ちが明るくなるのに。
と思っていた、きっと世界中のたくさんの小さな女の子達、男の子達、どちらでもない子達のお手本を、アリアナ・グランデは7 ringsという楽曲で、失敗しちゃっても私はこうしてる。とミーニングを込めて歌ったのではないでしょうか。
そう考えると、大丈夫、あの楽曲にあなたのお気に入りをはめ込んで失敗したのは、あなただけじゃないわよ!
と思い当たる大人達が、たくさんこの楽曲制作スタッフに名を連ねているのだろうな、と静かにクスッと温かい気持ちになれるんですよね。